帯広公共職業安定所管内の高年齢者の雇用状況
帯広公共職業安定所(本間信弘所長)は、2016年の「高年齢者の雇用状況」をまとめた。従業員を65歳まで雇用する「高年齢者雇用確保措置」を実施している企業は99・2%(前年比0・3ポイント増)、希望者全員が65歳以上まで働ける企業は76・1%(同1・9ポイント増)だった。実施企業は年々増えているが、背景には人手不足の影響もあるとみられている。
2013年に改正施行した「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、65歳までの安定雇用を確保するため、定年を65歳未満としている事業主に対し、(1)定年制の廃止(2)定年を65歳まで引き上げ(3)希望者全員を65歳まで継続雇用する制度導入-のいずれかの措置を求めている。違反者には、企業名公表の罰則がある。
同所に報告があった管内の従業員31人以上の385社の状況をまとめた。雇用確保措置の内訳は、(1)が3・1%(同0・6ポイント減)、(2)15・7%(同0・3ポイント増)(3)81・2%(同0・3ポイント増)。また、70歳以上まで働ける企業は20・8%(同2・9ポイント増)となった。
雇用確保措置が進んでいる状況について同所は制度浸透とともに、人手不足が関連していると指摘する。若い人材が集まりにくく、経験豊富なベテランを確保する手段として、定年を廃止した企業もあるという。宗宮郁子雇用指導官は「雇用確保措置は雇用者だけではなく、企業側にもメリットがある」と話す。社内体制整備が容易な(3)を導入した後に、(1)(2)を整備する企業もある。
2016年12月の十勝の有効求人倍率は1・2倍。求職者1人に対し、1・2件の仕事がある“売り手市場”にある。さらに、職業別のばらつきが大きい。軽作業(0・28倍)や事務職(0・42倍)などは求職者が多く倍率が低い。一方、サービス(3・35倍)や専門技術(2・48倍)、販売(2・13倍)などは倍率が高く、求人を充足できずに人手不足が続いている。有効求人倍率は25カ月連続で前年同月を上回り、しばらくは高水準が続くとみられている。
厚生労働省がまとめた全国の状況では、高年齢者雇用確保措置の実施企業は99・5%(同0・3ポイント増)。希望者全員が65歳以上まで働ける企業は74・1%(同1・6ポイント増)、70歳以上まで働ける企業は21・2%(同1・1ポイント増)だった。
数年前に継続雇用年齢を「65歳」から「70歳」までに延長した十勝管内のある企業は、対象者の多くが契約延長して働き続けている。人事担当者は「重たい荷物を運ぶなどの重労働はさせず、勤務時間短縮などで柔軟に対応している。年齢ではなく、本人の意欲を重視したい」とする。
日本老年学会などは1月、高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」に引き上げるべきだと提言。「社会の支え手」として捉え直すべきとの主張で、経験や知識が豊富な高年齢者の雇用や活用はさらに進む可能性も出ている。(池谷智仁)